
【斎藤健児(雅号:KENJIES)フェローへの手紙】
【冨田勲教授と歩んだ想い出】
現在、私は87歳を迎え、すべての公職から自由になり、小さな一般社団法人VALS LUDUSを創設し、大きなテーマではありますが、国連の「STI for SDGs」×「科学と社会」×「科学と文化」について、私的なZOOMセミナーを開いています。
斎藤健児さんにも、このたびフェローとして参加していただき、これからが楽しみです。
そこで、私からあなたに協力していただきたい内容を手紙にしたためました。冨田勲教授の音楽を、単なる「電子音楽の歴史」としてではなく、国連が推進する「STI for SDGs」の文脈で捉え直すことには、大きな意味があると考えています。冨田教授の仕事は、科学(Science)、技術(Technology)、芸術・感性(Arts)、社会的共有知(Innovation as Social Imagination)を統合した、「総合知の方法論」として再評価されるべき段階にきたと考えているからです。
1. なぜ今「TOMITA METHOD」なのか
冨田教授は「電子音楽家」ではなく、「知覚変換者」であった。
冨田音楽の挑戦は、単にシンセサイザーを使ったことではありません。重要なことは、人間の感性と宇宙観を、テクノロジーを媒介として再編成したことです。
例えば、『Snowflakes Are Dancing』『惑星』『火の鳥』では、音・空間・自然・宇宙・生命などの感性を統合しています。
これは現在のシステム思考、複雑系科学、知識統合、STEAM教育、トランスディシプリナリー研究と非常に親和性が高いと思っています。
2. 「STI for SDGs」とTOMITA METHODの接点
「STI for SDGs」の最大の弱点は、「科学技術はあるが、人々の感性と世界観の変容が追いついていない」ことです。
科学と社会 科学と文化
AI 共感
データ 美意識
技術 物語
科学 驚異
政策 想像力
つまり、「科学と社会」の実装化に対し、「市民科学」のアラン・アーウィンが重視した「科学と文化」の視点が弱いと思うのです。
そこで、その具体的参考事例として、TOMITA METHODに学ぶことが多いと考えたのです。
3. TOMITA METHODの核心
①「可聴化」
冨田音楽は、見えないものを「音」で享受可能にしました。
これは現在のデータソニフィケーション、AI音響解析、宇宙データの音楽化、環境データの音楽化に直結します。
つまりSDGsデータを、「理解」ではなく「体感」へ変換するエンジニアリングです。
②「科学と文化」の統合
近代以降、Science と Art は分離されてしまいました。
しかし冨田音楽は、Debussy、Holst、武満徹、宇宙工学、音響工学などを横断的に「束ねた知」にしたのです。
これはまさに、私が関心を寄せてきた
「Transdisciplinary Federation of Science and Technology(=横幹連合)」の
「新しい横幹知理論(Vision-to-Structure Framework)」、
「Mode 2 Science」、
そして「Transdisciplinary Approach」の具体的なモデル事例だと思っています。
③「驚異」の再生
SDGs教育は、しばしば「義務教育化」に傾きやすい。
しかし冨田音楽には、
「awe(畏敬)」
「wonder(驚異)」
「cosmic imagination(宇宙的想像力)」があります。
これはUNESCOの「教育・科学・文化」を束ねる知のモデルと言ってよいのではないでしょうか。
つまり、持続可能性には、「感性の持続可能性」が必要だからです。
4. 「TOMITA METHOD」にとっての「STI」とは何か
私はこれは、人間性本性の開花のための「STI」として捉えています。
5. 最後に
尚美学園大学大学院の冨田勲教授の下で学んだ音楽家たちに、TOMITA METHODの精神と方法を受け継ぎ、さらに進化し続ける「Science and Technology」を取り込みながら、TOMITA METHODのInnovationに日々挑戦して欲しいと願っています。
このたび、一般社団法人VALS LUDUSに斎藤健児さんにフェローとして参画してもらった動機も、そこにあります。
これから冨田勲教授の期待に応えて活躍してくれることを楽しみにしています。
松田義幸(教育学者)
第二代 尚美学園大学学長
一般社団法人VALS LUDUS 顧問